「僕が作ったパワーグッズを『ぜひ見たい』ということなので、『明日の日曜日に空いている時間はありませんか』とお伺いしました。」

「そうしたら、空いていると言ったのですか」と町会長。

「『夕方なら空いている』と言われたような気がします。」

「もしかして、中神先生の都合を聞いたときに、『予定が入っている』と言われたことがないのではありませんか」と町会長。

「おっしゃる通りです。今考えれば、他の予定を断って僕に会っていたような気がしますが、そのときは気がつきませんでした。今考えれば、パワーグッズに対する僕の反応から、先生の不老不死に関する研究が進んだのだと思います。」

「なるほど。渡辺さんが気に入られていたというよりは、実験材料としての価値が認められたということですか」と町会長。

「そうかも知れません。『是非見たい。ネパール人が置いていった49キロの水晶もある』と言われるので、翌日の夕方、中神先生のところに伺いました。」

「49キロもある水晶があるのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。巨大な水晶玉でした。」

「もしかして、この水晶にも反応してしまったのではありませんか」と町会長。

「反応した記憶はあるのですが、どういう反応をしたのか記憶がありません。」

「『ネパール人が置いていった49キロの水晶もある』と言ったのは、『この水晶なら渡辺さんが反応して、またパワーが上がる』と言う意味だったのですね」と町会長。

「そのときは気がつきませんでしたが、おっしゃる通りだと思います。」

「それで、翌日、自作のパワーグッズを持って、中神邸に行ったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。応接間のテーブルに、『これが、最初に作ったもので・・・』と自作のパワーグッズを3点テーブルに置いて、中神先生のコメントを、どきどきしながら待ちました。」

「中神先生は、何と言ったのですか」と町会長。

「『渡辺先生は、実にきれいに作るね。僕のなんか本当にいい加減で・・・』と言ったのです。」

「4回目の訪問から、『渡辺さん』が『渡辺先生』になったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。最初の訪問のとき哲学の話をしただけで、その後難しい話をしたことはなかったのですが、4回目の訪問から、『渡辺さん』が『渡辺先生』になったのです。」

「それでは、『渡辺先生』と呼ばれる理由に心当たりはなかったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。英会話スクールをやっていたので、『渡辺先生』と呼ばれることには慣れていましたが、バイトの若い女の子は、皆、『渡辺さん』と言ってましたね。」

2020/10/21

<イノシシ後記15>
どうやって穴をふさいだらいいのかアホポン化した頭をひねってみた。45センチほどの長さの鉄の杭をまとめて買ってあるので、それを何本か打ち込んでみようと思った。しかし、現場に鉄の杭を持っていって、穴に当ててみると、少し短かすぎた。そこで、竹の杭や木の杭を作ることも考えた。耐久性を考えると、ペンキも塗らなければならない。杭を作るには時間がかかる。他に、簡単な方法はないだろうかとアホポン化した頭をさらにひねってみた。<続く>

2023/10/4